ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)その2
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)のお勉強会2回目でした@ジョイセフ。今回は、日本とミャンマーの歴史的考察と、事例としての検証について。
いくつか、キーワードをメモしておこうと思う。
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(日本の経験からUHCを考える)
◎UHC実現の為の三大課題:①アクセスの公平性 ②サービスの質の担保 ③ファイナンシャルリスクの回避 ⇒三つ全てを実現しないといけない。
◎UHCが日本で確立するまでの変化 ①高度経済成長により、きれいな道路を自分の車で走る事ができるような生活の実現 ②国民皆保険制度 ③医療施設へのアクセス
◎高度経済成長により、保健医療の不公平は拡大した。⇒無医村の発生により、保険料を支払ってもサービス利用ができない地域(村)が増加した。
◎日本の国民皆保険制度の歴史
1927年:雇用保険スタート
⇒1935年:農協(共済)スタート
⇒1938年:国民皆保険法制定
⇒1961年:国民皆保険制度スタート
◎日本の乳幼児死亡率の改善は、国民皆保険でも高度経済成長でもない。⇒では何が原因?研究中。コミュニティーの中のアウトリーチ型サービス/サポートの拡充が、関連しているのでは?
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◎地域資源(人材)の貢献の歴史
開業助産師(産婆⇒明治政府が国家資格化&開業権を付与、戦後GHQが避妊具の販売を認める、出産介助を通じてアウトリーチ型の母親支援を実施しており、よくよく家庭の中の様子を知っていた)
⇒保健婦(1942年戦中も国保保健婦さんが活躍していた)
⇒愛育班&母子保健推進員(主に女性)
⇒生活改良普及員(主に男性)
◎保険婦の種類 ①開拓保健婦(北海道)②駐在保健婦(高知・青森)③公衆衛生看護婦(沖縄)
⇒北海道の開拓保健婦は、アウトリーチ型の訪問サポートの際に、ソリに乗り馬に引かれて移動していた。日本のアウトリーチ型の母子支援の先駆的取り組みに保健婦の活躍があった。
◎将来的な課題:①移民への対応 ②ASEAN諸国のUHC構築の足並み
◎懸念事項(トランプ大統領の動向):①反移民活動 ②反ワクチン活動 ③反環境保護
⇒脅威となり得るのが、ワクチン接種をしていない大量の移民や、世代の流入/存在。地域コミュニティーにおける流行性の疾病への免疫が、社会全体で低くなる可能性が高まる。
◎アジア健康構想への日本の長期的目標
①「持続可能な開発目標(SDGs)」への日本のコミットメント⇒UHC
②医療と介護を一体的に捉えた地域包括ケアシステムの構築に向けた道筋を描く
③単に日本の経験を伝えるだけではなく、民間事業等の進出/受入を支援
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(アジア・アフリカにおけるUHC実現の支援〜ミャンマー〜)
◎長期間の軍政下で停滞した保健医療分野への投資という背景がある。
①独立直後に「農村保健所」が全国に設置され、1960年代社会主義体制下で「タウンシップ病院」が整備され、基本受診料無料の公的医療施設でのケア提供が、国の保健医療体制の根幹となり、現在に至っている。
②1990年代には検査料・一部医薬品に対する住民負担を求めるコストシェアリングが導入。その後、財政難で2000年代に患者負担「Out of pocket payment」が8割を超える。<現在は5割程>
③軍事政権下、保険医療分野への公的投資が停滞、経済統制により海外援助も縮小。医療施設の老朽化、医薬品の欠乏、医療者の不足、医療の質・量とアクセスの低下をもたらした。
④近年の民主化、新政権、経済制裁解除に伴い、保健開発への投資が急速に拡大中。急速な開発に伴う格差の拡大、効率性の改善が課題。
◎公的医療施設は、がらーーーんとしていて、Good for meditation but not good for medication. と冗談が飛ぶ程。公的施設に所属している医者が、勤務時間中でも私立のクリニックなどに出向いて、診療をして(収入源としている)いることも多々有る。公立の病院の実態が、うまくまわっていない現実がある。
◎長期的軍政下の国民健康への影響(数値の減少率が、諸外国に比べて低い)
①妊産婦死亡率:1990年〜2015年の減少率61%
②乳児死亡率:1990年〜2015年の減少率50%
◎民主化に伴う保健医療分野への投資の拡大
①2010年〜2014年 民主化に伴う国家保健予算の拡大
②経済制裁解除に伴う海外からの保健援助の拡大
◎ミャンマーの保険医療分野の現状 〜保険医療サービス体制〜
①公的保健医療:公的病院1130、保健所9600、医者7900名、看護師17300名、助産師11400名
②民間医療の体制:民間医療施設5000、医師18500名、有料診察(安くはない)、大都市集中
③援助機関、NGO等による地域保健活動:国連機関が技術&資金提供、NGO等の草の根支援
◎ミャンマーの保健財政の課題
①低い人口当たりの総保健支出額:WHO推奨の半分
②国家予算に対し低い保健予算率:2016年〜2017年に4%に上昇した。<日本20%>
③高い自己負担額:2009年の8割⇒5割へ減少した。<日本3割>
④貧困そうのための持続的な保証制度がない:国民の4分の1が貧困層だが、保証制度がない
⑤低い公的健康保険(SSB)カバレッジ:企業労働者向けの公的医療保険は全人口の2%のみ
◎2014年UHC戦略:9つの重点事業とは?
①基本的保健サービスパッケージの確定
②保健人材の強化
③基礎医薬品、施設設備・機器、技術の確保
④官民の連携強化
⑤財源の確保(選択肢)・経済的保護の方策確保
⑥健康促進、保健サービスへの住民参加
⑦民間セクターも含めた保健情報システムの強化
⑧UHC達成にむけた政策見直し
⑨UHC達成にむけた行政の管理・支援の強化
◎ミャンマー国家保健計画(NHP)2017〜2021
〜課題〜
①保険医療行政の地方分権
②タウンシップ保健計画重視へのアプローチ
③多彩な病院の機能の活用
④データベースの保健計画の拡大
⑤自国のニーズに合った保健計画の実践
◎ミャンマーでの保健医療ODA事業の今後の展開
〜課題〜
①日本の強みを協力
②プロジェクト間の徹底した有機的連携
③日本の官民総力の集結
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いやぁ、難しいw
しかし、今回の発見は日本の乳幼児死亡率の低下に、アウトリーチ型の社会資本としての医療職のサービスやサポートが一躍をかっていたということを知ったことだった。
産後のご家庭に足を踏み入れ、そして暮らしを支える産後ドゥーラの活動も、こうした日本の文化に根ざしている部分が大いに有る事を知ることができた。
現在、妊産婦の死亡の原因の1位が、自殺となっている日本。この日本のUHCの将来を捉えたとき、
アウトリーチ型の家庭・母親支援を得意とする「産後ドゥーラ」の活躍が、多いに期待されてくると予測できるのではないか?
◎産後ドゥーラとは?⇒こちらをご覧下さい。
☝️内閣官房「くらしの質」向上検討会2014<事例集P6>より
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